sandy-note
2015年5月作成
日本人は過保護
電池交換
自分の家を見つけ、1人で住み出してしばらく経ったある日、部屋の暖房が止まった。コントロールボックスの電池切れだった。早速、電池を買ってきて取り替えた。うんともすんとも動かない。弱りはしたがそれほど大事とは考えず、ダメだったら明日不動産屋に来てもらえばいいやと高を括っていた。ところが、こちらはいわゆるセントラルヒーティングなので、電池が切れると家中の暖房が止まってしまう。夕方になって日が沈むと底冷えがしてきた。寒いはずで外は氷点下だった。まだ家具も揃ってないし、日本から送った船便も届いてない頃だったので、床に座布団を敷いて毛布で寝ていた。これはまずいと色々試したがダメで、コントロールボックスに書いてあったメーカーを調べて電話した。つたない英語で何とか困ってる旨を伝えた。このまま一晩越したら死んじゃうじゃんとか考えながら、来たばっかだし、一人だし、寒いし、心細いし、焦りに焦っていた。電話の向こうでは「I don't know. Just a moment.」。おい、おい、たらい回しかよって思ったが、こちらの良いところはぜったい切れない。何度目かの転送で開発部署に繋がり、おそらく技術屋と思われる人物から漸くアドバイスを貰えた。それは予想だにしないものだった。「電池を外したら30分待って、それから電池を入れてスイッチを入れてごらん。」えっ、それだけ?万策尽きていたので、言われた通りにやってみた。なんと一発で家中のシステムが動き出した。溜まった電荷を放電するのに30分かかると言うことだ。どうやら電池交換の常識みたい。こちらでは、たったこれだけのことを知らないだけで命に係わる。日本では日常の中で死を意識することなんてまずない。だから逆に毎日「生きている」と実感する。
予防注射
海外赴任が決まってから出発するまでに家族全員で予防注射を受ける。間隔をおいて2-3回くらいだったか。1回では効果がないと説明を受けた。自分は時間的に1回しか受けられなかったが、当然、子供達はきちんと受けさせた。
こちらへ来て、小学校と幼稚園の入学手続きをしたわけだが、一括して学区の教育委員会のようなところで行う。兄弟の多い家庭などは特に一度で済むので合理的である。その手続きの中に予防注射があり、日本でやってきたことを説明し証明書を渡した。その直後、我が目を疑う光景が飛び込んできた。証明書をチラ見した後、「アメリカでは予防注射しないと学校に入れないのよ」とか言いながら、上の子は4本、下の子は3本、目の前で立て続けに打たれた。泣いている暇もない早業。だ、大丈夫なのか?日本での数ヶ月は何だったん?
薬局
娘が風邪をひいて熱が出たので病院に連れて行った。しばし待って医者に症状を説明したら、薬局までの地図を書いてくれて、「アスピリンを買うのよ」と言われた。診察終わり。呆然と立ちすくんでしまった。
こちらの考え方はこうだ。まず、自分で出来ることは自分でやる。どうしても対処できなくなったとき、最後の手段で病院へ行く。医者は一般人が対処出来ないことをやる。だから「doctor」はみんなから尊敬されるのだ。こちらに来て感じるのは、どんな業種の人も自分の職業に誇りを持っている。プロ意識と言うことなのだが、そこまで大袈裟でなくても、あなたが出来ないことを私は出来ると言う自負が「pride」に繋がっている。
鹿ダニ
家の前に立て看板が立った。ライム病に注意。鹿ダニに噛まれるとライム病になるそうだ。鹿ダニ?ライム病?なんじゃそりゃ。色々調べると恐ろしや、笑い事じゃない。ライム病は潜伏期間が10年もあって、10年後に発病して脳がやられるとのこと。鹿ダニは文字通り鹿に付いているダニで、我が家の庭も、鹿の家族の通り道になっていた。

おい、おい、おい。庭で、特に芝生の上で遊ぶときは、夏でも長袖長ズボンは常識。ちっちゃい子は遊び終わったら、シャワー室で裸にして、全身くまなく噛まれてないか親が調べる。これも常識。聞いてないよぉ~。
日常点検
皆さんは車の日常点検をしているだろうか?免許取りたてで初めて車を買ったときに1、2度やったような記憶が、、、
半年くらい経った春のこと。初めての家族旅行でナイヤガラへ行ってきた。車で6-7時間。カナダ側からの景観がすばらしい。

割と近場なので赴任者の間では定番になっていた。途中でガス欠になると携帯の電波も届かないから大変だと聞いていた。市街地を抜ける前に満タンにして、一路カナダへ。途中のまっすぐなハイウェイで、前も後ろも地平線が見えるくらい車が1台も見えない。確かに!ここでガス欠したら大変だ。
順調に走ってもうすぐカナダ。国境を渡る直前に、な、なんとパンク。3年間で4回パンクしたが、これが初めての経験。そもそもパンクって通じるの?電子辞書で調べて「flat tire」だと知る。なるほどね。「AAA」と言う、日本で言うところの「JAFF」に電話して来てもらった。「スペアがないのかい?ジャッキが壊れてるのかい?」
しまった!またやった。病院と同じだ。自分で直せと言うことか。アメリカに来たばっかりで、、、車も買ったばっかりで、、、申し訳なさそうに言い訳しながら、結局やってもらったが料金は取られなかった。一般人が出来ないことをやるのが仕事ってことですよね。「どこから来た?」と聞くから答えると、「スペアではそこまで帰れないからカナダに行ったらちゃんとしたタイヤを買え」と言われた。ホテルに着くと家族を部屋に残し、カナダの街で自動車屋探し。観光するはずが、半日かかった。
しかし聞いておいて良かった。あのハイウェイの真ん中でスペアが破裂したら、、、日常点検は教習所で習った決まりだからやるのではなく、必要だからやる。せめて遠出の前には点検しないと。
毎日がイベント
最初の年は毎日がイベント。ちっちゃなトラブルばかりだが、1年も経つと焦らないし、落ち込まないし、腹も立たない。むしろ、色々な初体験が楽しく感じる。帰国して思うことは、日本人はなんて過保護なんだ!過保護だからちょっとしたことで焦ったり、落ち込んだり、腹が立ったりする。気付くといつのまにか眉間にしわが寄っている。なんかギスギスしてるよね。